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修羅の物語

これは、ある人と、ある人の中にいる修羅と対話した記録です。ちょっと物語風にしてみました。


青年の中には修羅がいました。
修羅はときおり青年を乗っ取り、殺め、傷つけていました。
乗っ取り終えた後は、青年自身も傷ついていました。

ある日、青年は夢のなかで、修羅を見る機会がありました。

その修羅は180cmくらいの男でした。
皮膚の色はもともと陶磁器のような美しい白でしたが、返り血で真っ赤になっています。
腕は10本程度生えており、それぞれ武器・あるいは拷問器具を携えています。

ただ、よく見ると、腕が一本だけちぎれているようでした。
そして、そこには確かに痛みがあるようでした。

顔には何も写していません。ただ神々しく、無表情で佇んでいました。

青年は彼にききました。
「なぜあなたはいるのですか?」

修羅は淡々と述べました。
「いるべきだからだ」

青年はさらに重ねました。
「なぜ人を傷つけるのですか?」

修羅は答えました。
「それが必要だからだ」

青年
「なぜ私を乗っ取るのでしょうか?」

修羅
「お前が弱いからだ」

青年
「なぜ私である必要があるのでしょうか?」

修羅
「お前である必要はない」

少し青年が考えて聞いてみました

「あなたが私を乗っ取らないためにはどうしたらいいですか?」

「お前が強くなれば良い」

「どうすればいいのでしょうか?」

すこし時間が経ちました。
そして、修羅は黙って自分の腕を引きちぎり、武器と共に白い腕を渡しました。

驚くほど冷たい腕でした。
そのうち、みるみると、溢れる血で赤く染まっていきました。
その血は、痛みのある熱さを持っていました。熱すぎる温泉水が彼の頭の中に浮かんでいました。
青年はその痛々しさと生生しさ、不安定さ、一貫性のなさ、そして不気味さに気分が悪くなっていました。

意味がわからない、気持ち悪い、不快だ。

そうした考えで頭がいっぱいになったと同時に、青年は現実に戻りました。

戻った瞬間、人喰いグマが襲ってきました。

青年は咄嗟に修羅の腕で庇いました。

修羅の腕はびくともせず、くまの力ではどうにもできない頑丈さがありました。

しかし、修羅の腕で押し返すには青年にも困難で力がいることでした。

しばらく押し合いをしていました。
やがて人喰いグマは諦めたのか、それとも、呆れたのか。
のそのそと帰っていきました。
青年はほっとしたあとに、ぞっとしました。

人喰いグマは、このあと、他の人を食べるのであろうと。

そして修羅の腕に目を向けました。

修羅の腕には傷一つついていませんでした。

青年は気付きました。

修羅のもがれていた一本の腕は、戦いによってちぎれたものではない。
過去に誰かに渡したものだったのだ。

そして今、新たに私に授けられたのだ。と。

青年は修羅と話そうとしました。
修羅はもう答えてくれませんでした。

もともと生きる世界が違うのです。

修羅の腕から流れる血にもう熱さがないことに気がつきました。
修羅の血は、靴の中までぐしゃぐしゃに侵食しており、冷たい不快感を感じていました。

そして青年は、口を小さく結び、熊を探しに出かけるのでした。


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